体質は遺伝子でどこまで決まるのか?
更新日:2017年05月18日
体質と遺伝子、そして環境との関係が、最近の研究から明らかになりつつあり、遺伝子検査でも取り扱われています。この章では、肥満や長寿、アルコール代謝など、私たちの体質に関わっている遺伝子を紹介します。
体質とは
体質とは、身体の性質で、遺伝要因と環境要因との相互作用によって形成される、個々人の総合的な性質、とされています。
体質の違いのうち、アジア人と欧米人との違いなど、人種によって違う点は「人種差」、一方同じ人種間での個々人の違いは、「個人差(個体差)」と呼ばれています。
「体質」は医学用語ではない?!
日常的に使われている「体質」という言葉ですが、実は最近の医学書の中にはほとんど見られないそうです。(「体質と遺伝子のサイエンス(羊土社)より」)
もともと「体質」という言葉は特定の何かを示す用語ではなく、「身体の性質」という概念を表すもので、原因がはっきりしない病気などが体質によるものとされてきました。
しかし、病気の原因となる遺伝子やタンパク質が特定されたり、体質という用語自体が別の用語に置き換わったりなど(「本能性高血圧」など)したため、専門用語として「体質」という言葉が使われる機会が減っていったようです。
「体質」という用語が日本で使われ続けているわけ
医学用語ではない「体質」という言葉ですが、私たちの日常では非常によく使われる言葉です。これは、西洋医学が室町時代に日本に伝わる以前から日本にあった東洋医学の影響が大きいと考えられています。
西洋医学は、分析力に優れ、専門化、細分化して発展してきました。一方、東洋医学は、症状や病気の原因となる体の中の原因を見定め、身体全体のバランスを整えようとしながら、「体質」に近い概念を中心にして、今日まで伝えられています。「体質」に関する考え方は、このような東洋医学を通じて、日本人の感覚の中に刷り込まれてきたのでしょう。
なお、現代の医学書からは消えつつある「体質」という言葉ですが、医療の現場では、原因がはっきりしない、あるいは、診断名に至らないものについては、患者と医師が共通の理解を持つために、今でも「体質」という言葉が使われることが多いようです。
西洋医学 | 東洋医学 |
---|---|
分析的 | 総合的 |
人工物 | 自然物 |
外因重視 | 内因重視 |
局所治療 | 全身治療 |
西洋医学と東洋医学の比較
体質と遺伝要因、環境要因との関係
「体質」は、遺伝要因を受けるものが多く、外見上の特徴などは、ほとんどが遺伝要因で決まります。しかし、それぞれの「体質」には多数の遺伝子が関与しており、民族によっても関係する遺伝子が異なります。例えば、身長などは約8割が遺伝要因と考えれられていますが、それに関与する遺伝子は、日本人の場合、30個以上あるといわれています。
一方、生活習慣病やがんなどの病気のなりやすさは、食事、運動、ストレスなど、生活習慣の影響を大きく受けます。
遺伝要因と環境要因
では次からは、GWASなどで明らかになってきた、体質と遺伝子の関係性について、紹介していきたいと思います。
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