犯罪を起こしやすい、
攻撃的な遺伝子「MAOA」
公開日:2016年06月26日
攻撃的な性格は遺伝するものなのでしょうか。少なくともX染色体上の「MAOA」遺伝子の異常は、攻撃的な性格と関連があるようです。

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戦士の遺伝子、「MAOA」遺伝子
1993年、オランダのある家系の遺伝情報が公開されました。その家系の男性には、放火やレイプ、露出癖などの犯罪行動を起こす人が多くいたのですが、その男性たちには共通して、ある遺伝子の異常が見つかりました。
それがX染色体上にあるモノアミン酸化酵素A(MAOA)遺伝子、別名「戦士の遺伝子」です。MAOAは、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を酸化させる作用を持つ酵素で、酸化された神経伝達物質は機能を失って、ニューロンの外に排出されます。先のオランダの家系において、犯罪行動を起こす男性全てで、このMAOA遺伝子が欠失変異していて、MAOAが機能していないことが分かりました。
Science. 1993 Oct 22;262(5133):578-80.
Abnormal behavior associated with a point mutation in the structural gene for monoamine oxidase A.

MAOA遺伝子の多型
なお、MAOA遺伝子には多型が存在していて、それによってMAOAを作る量に差が生じます。ニュージーランドの男性を対象にした研究では、酵素をつくる能力が弱いMAOA遺伝子だと暴力行動に結び付くことが分かったのですが、しかしそれは幼いころに虐待を受けていた場合に限られていて、同じ酵素をつくる能力が弱いMAOA遺伝子を持っていても、虐待を受けていなければ、特に目立った影響はなかったそうです。
これは遺伝子と環境が密接に作用し合っていることを示す一例といえるでしょう。
Science. 2002 Aug 2;297(5582):851-4.
Role of genotype in the cycle of violence in maltreated children.

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