男性の不倫傾向に影響を与えているかもしれない遺伝子
公開日:2016年06月26日
ハタネズミの研究から一夫多妻制の種と乱婚制の種にアルギニン・バソプレッシンの受容体(V1aR)の脳内分布に違いがあることが分かっていました。では、人間の場合はどうなのでしょうか。

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ネズミで一夫一妻制を決定づける遺伝子が見つかった?!
実は、ほ乳類の多くは一夫多妻制や乱婚制であり、一夫一妻制であるものはごく少数です。この交配行動に関するハタネズミを対象にした研究で、興味深い報告が2004にありました。
プレーリーハタネズミは生涯一夫多妻制ですが、近縁種のモンタナハタネズミは乱婚制です。またこれらのハタネズミには、ペプチドホルモンの1つ、アルギニン・バソプレッシンの受容体(V1aR)の脳内分布に違いがあることが分かっていました。そこで、乱婚制のモンタナハタネズミに遺伝子操作を行い、V1aRの脳内分布がプレーリーハタネズミに近い状態になるようにしました。すると、モンタナハタネズミのペアは一緒にいる時間が増加、さらにオスが子供の世話をするようになり、一夫一妻制のような行動が見られたそうです。
Nature 429, 754-757 (17 June 2004)
Enhanced partner preference in a promiscuous species by manipulating the expression of a single gene

ハタネズミ
ヒトのV1aR遺伝子は…
ハタネズミでのこの研究を受けて、ヒトでもV1aR遺伝子多型があって、男性の不倫傾向に影響を与えているかもしれないと調査が行われました。調査を行ったのはスウェーデンのカロリンスカ研究所のグループで、スウェーデンの500組以上の双子とその配偶者を対象に、結婚生活の満足状況を調べました。
V1aR遺伝子は、両親から1つずつ受け継ぐので、みな2つずつ持っているのですが、、いくつかある多型のうち、334型という多型を2つ持っている男性は、334型を1つも持っていない男性と比べて、2倍以上※、離婚の危機を迎えていたそうです。
※ 2つ持っている男性の34%、1つも持っていない男性の15%が離婚の危機を迎えていた。
ただし、334型の遺伝子を持つ男性に対する配偶者の満足度ポイントは、
- 2つ持っている男性の場合:45.5
- 1つ持っている男性の場合:46.3
- 1つも持たない男性の場合:48.0
という結果で、統計的に有意ではあるものの、それほど大きな差があるわけではなかったそうです。V1aR遺伝子は不倫傾向を決める決定的な要因というわけではなく、複数ある要因の1つに過ぎないということでしょうか。
ちなみに、334型のV1aR遺伝子を少なくとも1つ持つ男性は全体の40%、2つとも334型の男性は4%だったそうです。また、この調査結果は、女性には当てはまらないそうです。
Proceedings of the National Academy of Sciences 105(37):14153-6 October 2008
Genetic variation in the vasopressin receptor 1a gene (AVPR1A) associates with pair-bonding behavior in humans
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