タバコ、ニコチン依存に関わる遺伝子と肺がんリスク
公開日:2016年05月22日
タバコのニコチン代謝に関わる遺伝子及びそのSNPもこれまで数多く報告されています。その中で、このページでは、ニコチン依存および肺がんリスクとの関わりが指摘されているCHRNA3遺伝子のSNPについて、紹介したいと思います。
Nature Genetics 42, 441–447 (2010)
Genome-wide meta-analyses identify multiple loci associated with smoking behavior
ニコチン代謝に関わるCHRNA3遺伝子
CHRNA3遺伝子は、ニコチン性アセチルコリン受容体に関わる遺伝子です。ニコチン性アセチルコリン受容体とは、その名の通り、体内にニコチンが入ってくるとくっつくタンパク質で、そこから脳の神経が刺激され、ある種の快感がもたらされるといわれています。
タバコ、ニコチンへの依存度を高めるSNP
このCHRNA3遺伝子のSNPの一つ、「rs1051730」には、G/G、A/G、A/Aの3タイプがあります。このSNP「rs1051730」について、ヨーロッパ人を対象にした報告ですが、A/Aタイプの人は、タバコへの依存度が高い傾向にあるそうです。
ヘビースモーカーでもSNPによって肺がんリスクが異なる
また、CHRNA3遺伝子については、日本人を対象にした報告に興味深いものがあり、同じヘビースモーカーでもSNPによって肺がんリスクが異なるそうです。
調査されたSNPは「rs12914385」というCHRNA3遺伝子のSNPで、このSNPには、C/C、C/T、T/Tの3タイプがあります。C/Cタイプの非喫煙者の肺がんリスクを1とした場合、同じC/Cタイプのヘビースモーカーの肺がんリスクはその5.44倍なのに対して、C/TまたはT/Tタイプのヘビースモーカーの肺がんリスクはなんと9.15倍にもなるそうです。
J Thorac Oncol. 2012 May;7(5):790-8.
Association between a genome-wide association study-identified locus and the risk of lung cancer in Japanese population.
今後、こう言った遺伝子SNPの検査から、ニコチン依存症の改善薬が出てくることを期待したいと思います。
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