翻訳されないRNA、ノンコーディングRNA(ncRNA)
公開日:2015年10月23日
ノンコーディングRNA(ncRNA)とは
タンパク質に翻訳されるmRNAですが、実はタンパク質に翻訳されないRNAがあります。これがノンコーディングRNA(ncRNA、非コードRNA)です。
ヒトゲノムのうち、遺伝子(エキソン、イントロン、プロモーターなどを含む)に当たる部分は全ゲノムの約5%、さらにタンパク質をコードするエキソン部分だけだと、1%程度にすぎません。ノンコーディングRNAは、エキソン以外の部分から転写されているRNAで、実はRNAの大部分がこのノンコーディングRNAです。
発見当初は用途がよく分からなかったノンコーディングRNAですが、その後、特定のDNAに直接作用したり、RNAやタンパク質と相互作用することで、遺伝子の働き方やエピゲノムの状態を調整しているという報告が出てきました。さらに、ノンコーディングRNAを転写するDNAの配列自体に、SNPや、メチル化が生じて、その働きが変化する場合もあるようです。
ノンコーディングRNA(ncRNA)
(「あなたと私はどうして違う?体質と遺伝子のサイエンス」(中尾光善 羊土社 2015年)より転載)
ノンコーディングRNAが変化することで、形質も変化することがある
DNAは絶対的な生命の設計図ではない!?
ここまで、個人差を生み出しているポイント「SNP」、「ポリジーン」、「エピジェネティクス」、「ノンコーディングRNA」について説明してきましたが、これらはそれぞれ別々に疾患、体質に影響しているわけではなく、むしろ密接に関連しあいながら、遺伝子の働きを幾重にも調整したうえで、私達の体を作っています。
よくDNAは生命の設計図といいますが、実はそこまでかっちりしたものではなく、もう少し大まかな指示書程度のものととらえたほうが良いかもしれません。
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