ポリジーンと多因子遺伝病(遺伝性疾患)
更新日:2017年01月27日
ポリジーンとは
ポリジーン遺伝は2つ以上の遺伝子がかかわり、形質が現れる遺伝のことで、多因子遺伝とも呼ばれます。代表的な例は、身長、体重、血圧、知能などです。
複数の遺伝子が関与するということは、1つ1つの遺伝子の寄与率が低くなるということであり、それだけ遺伝子以外の影響(環境など)も大きくなります。複数の遺伝子の関係性に加え、環境因子も作用した結果、形質の分布は平均値付近がピークの連続した正規分布の形になります。
多因子遺伝性疾患(多因子遺伝病)
ポリジーンが関係する遺伝病は、複数の遺伝子が関わるため、「多因子遺伝性疾患(多因子遺伝病)」と呼ばれています。多因子遺伝病には、2つのグループがあり、1つは、症状が軽いものから重いものまで連続して分布しているタイプの病気、もう1つは、生まれつき身体にはっきりした異常が表れるタイプの病気です。
1つ目のタイプの病気には、生活習慣病(高血圧や糖尿病など)やアレルギー性疾患(気管支喘息、アトピー性皮膚炎など)、精神疾患(統合失調症、てんかんなど)など、比較的「ありふれた」病気があげられます。これらは生活環境の影響を受けやすく、発症には人種差が生じやすいという特徴があるともいわれています。
2つ目のタイプの病気には、口唇口蓋裂(口唇の一部が裂けている状態など)、先天性心疾患(心臓のつくりに異常がある状態)、二分脊椎(生まれつき脊椎の一部が形成されなかった状態)、幽門狭窄症(幽門(胃の出口から十二指腸につながる部分)の筋肉が異常に厚くなる状態)、多指症などがあげられます。
多因子遺伝病は、1つの要因で発症するわけではないため、複数の遺伝因子と環境因子の作用の総和が、ある一定のしきい値を超えたとき発症するというように考えられています(多因子しきい説)。
多因子しきい説
しきい値を超えたDさんが病気を発症。
さらに、作用する遺伝子には、発症を促進する遺伝子、発症を抑制する遺伝子、環境因子による影響の増減、SNPによる影響が複雑に絡んできます。そのため、疾患を起こす遺伝子を持っていても発症しなかったり、逆に、病気を起こす遺伝子を持っていないのに、環境因子等の影響で発症したりする場合があります。
ポリジーンと形質
(「あなたと私はどうして違う?体質と遺伝子のサイエンス」(中尾光善 羊土社 2015年)より転載)
環境、SNP等の影響で形質に違いが生じる。
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