性格は遺伝するの?
公開日:2016年06月26日
親子だと外見だけでなく、性格も似ているって思ったことありませんか。実は、性格も遺伝するでは?
この章では、好奇心や共感力、犯罪行動や不倫傾向に関わっているのではないかと研究されている遺伝子を紹介します。
ヒトの特徴に影響する遺伝要因と環境要因の割合
Newton「遺伝とゲノム」によると、外向性は46%、誠実性は52%、好奇心・探究心は34%、うつ傾向は40%、それぞれ遺伝要因の影響を受けているそうです。
「性格は遺伝するの?」の記事一覧
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性格は遺伝するの?
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性格は遺伝するの?
このページでは、性格と遺伝の関係について有名なアメリカのロバート・クロニンジャー博士らの研究を中心に紹介します。
7つの性格分類と遺伝
性格と遺伝の関係については、数十年前から活発に研究がされており、特にアメリカのロバート・クロニンジャー博士らの研究が有名です。この研究では人の性格を7つに分類し、双子に関する研究から、
- 新奇性探究(好奇心)
- 損害回避(心配性)
- 報酬依存(社会性)
- 固執(忍耐強さ)
の4つ(クロニンジャー理論では「気質」という)は遺伝の影響が強い一方、
- 自己志向(自立性、責任感)
- 協調(協調性)
- 自己超越(スピリチュアリティ)
の3つ(クロニンジャー理論では「性格」という)は遺伝性が低く、成長とともに形成される性格だとしています。
J Pers Soc Psychol. 1996 Jan;70(1):127-40.
Genetic and environmental structure of the Tridimensional Personality Questionnaire: three or four temperament dimensions?
新奇性探究(好奇心)
- 特徴:
- 新奇性探究が高い人:新しもの好き、衝動的、浪費家 など
新奇性探究が低い人:関心が狭い、禁欲的、慎重 など
新奇性探究は、行動の活性化と開始に関するもので、神経伝達物質の一つ「ドーパミン」が関わっているとされています。2002年にはドーパミン受容体D4(DRD4)の遺伝子多型がこの新奇性探求に結び付くのではないかと騒がれました。
Mol Psychiatry. 2002;7(7):712-7.
A meta-analysis of the association between DRD4 polymorphism and novelty seeking
このDRD4遺伝子には、48文字の決まった並びの繰り返しがあります。この繰り返しの数は2~7回程度で、人によって差があるのですが、その繰り返しの数が多いほど、新奇性探究が高かったそうです。ちなみに、日本人はこの繰り返しが4回の人がほとんどであるのに対して、アメリカ人は4回と7回の人が半々程度だそうです。
もっとも、その後の研究では、DRD4遺伝子と新奇性探究との関わりを示す結果を得ることができていないそうです。せいぜいドーパミン受容体D2(DRD2)の遺伝子多型が新奇性探究の性格を持つ女性の3%に見つかったという程度で、今後のさらなる検証が必要とされています。
損害回避(心配性)
- 特徴:
- 損害回避の高い人:用心深い、怖がり、内気 など
損害回避の低い人:楽観的、無責任、社交的 など
損害回避は、行動の抑制と中止に関するもので、神経伝達物質の一つ「セロトニン」が関わっているとされています。セロトニン・トランスポーター(5-HTT)の遺伝子多型との関連が報告されていますが、それを否定する研究もあり、こちらも引き続きの検証が必要とされています。
報酬依存(社会性、愛着)
- 特徴:
- 報酬依存が高い人:共感的、情緒的、感傷的 など
報酬依存が低い人:孤立、情緒的に冷静、感傷的でない など
報酬依存は、進行中の行動の維持と持続に関わるもので、神経伝達物質の一つ「ノルアドレナリン」が関わっているとされています。研究の歴史的背景から報酬依存と呼ばれていますが、内容はほぼ人間関係に関わるものなので、「社会性」あるいは「対人志向性」と考えたほうが分かりやすいかもしれません。なお、報酬依存に関わる遺伝子は、今のところまだ見つかっていないそうです。
固執
- 特徴:
- 固執が高い人:完全主義、忍耐強い、熱心 など
固執が低い人:適当、飽きっぽい など
固執は、行動の固着、一つのことをずっと続けられるかに関するもので、特定の神経伝達物質との関連性は今のところ想定されていません。
性格に関わる遺伝子を調べてくれる遺伝子検査
性格に関わる遺伝子検査を提供している会社も複数あります。例えば、DeNAライフサイエンス社の遺伝子検査サービスMYCODEでは、オプションサービス「fumfum」のなかで、粘り強さや協調性など、いろいろな性格に関わる遺伝子を取り扱っています。
また、好奇心に関しては、ジェネシスヘルスケア社のジーンライフ・ジェネシスやジーンクエスト社のジーンクエストALLでも取り扱っています。
ただし、ここで注意しておきたいことがあります。性格に関わる遺伝要因は、単一の遺伝子によってもたらされるものではなく、複数の遺伝子が関わるもの(ポリジーン)である場合がほとんどであり、一つの遺伝子による決定力は、せいぜい数%だということです。したがって、性格に関する遺伝子検査をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。ただ、話のネタとしては面白いですよね。
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遺伝子、遺伝子検査についてもっと知りたい方へ
このページを作成するにあたり、参考にしている書籍等を紹介します。
- 学んでみると遺伝学はおもしろい(針原 伸二(著) ベレ出版:2014年3月)
- 遺伝とゲノムどこまでわかるのか(ニュートン別冊 ニュートンプレス:2013年7月)
- 遺伝子医療革命(フランシス・S・コリンズ(著) NHK出版:2011年1月)
その他の遺伝子、遺伝子検査に関する参考資料はこちら。
参考資料一覧
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