肌、髪の毛、瞳の色に関わる遺伝子
公開日:2017年01月17日
肌や髪の毛、瞳の色は個人で違いがありますが、これも遺伝子の違いによるもので、これまでに10個以上の遺伝子が、肌、髪の毛、瞳の色の違いに関わっているという報告があります。ここではその一部を紹介します。
人類の移動と肌の色
ヒトの肌の色の違いは、祖先がアフリカを出て移り住んでいった環境へ適応の結果だと言われています。
もともと、アフリカ大陸にいたヒトの祖先の肌の色は濃色でしたが、それは、赤道付近に住む祖先にとって、強い紫外線から身を守るために、濃色の皮膚が必要だったからです。
一方、アフリカ大陸を出て、北の方に移り住んでいった人々にとっては、肌の色が淡色であるほうが、生存に有利になりました。
これには、ビタミンDが関係しています。ビタミンDは、ヒトが生きるために必要な栄養素の1つです。皮膚に太陽光を浴びることで、人体で生成されますが、不足するとくる病(骨格異常が生じ、妊娠中や出産時には母子ともに死に至ることがある)になってしまいます。
もし、肌の色が濃いと、その肌の色素が太陽光の吸収を邪魔してしまい、日差しが弱い地域では、ビタミンDが十分に生成されません。一方、肌の色が淡色だと、日差しが弱くてもビタミンDは十分生成されます。そのため、淡色の肌の人々は、ビタミンD不足に陥らずに済んだのです。
メラニン生成に関わるSLC24A5遺伝子の変異が原因の1つ
最近、肌の色を変えた分子的な原因が見つかりました。それは、濃色の肌や毛髪の色素「メラニン」を作るのに必要な、SLC24A5遺伝子の変異です。アフリカ人の場合、このSLC24A5遺伝子は完全に機能していますが、ヨーロッパ人のSLC24A5遺伝子には必ず変異があり、機能が不完全です。
ちなみに私たちアジア人は、アフリカ人同様完全に機能しているSLC24A5遺伝子を持っているものの、別の遺伝子に変異が生じたため、肌は黒くないが毛髪は黒い、という状態になっているそうです。
「アルビノ(先天性白皮症)」を引き起こす「TYR遺伝子」の異常
アルビノ(先天性白皮症)は、11番染色体にあるTYR遺伝子の変異が原因で発症する病気です。メラニン色素がほとんど体内で作られず、白い皮膚、薄い金髪、薄い色の虹彩などの外見的特徴のほか、虹彩が光を遮る機能が弱いために視力が低下しやすく、また、日焼けの影響が強いため皮膚がんになりやすいといわれています。
このTYR遺伝子の塩基配列には、アルビノにはならないまでも、TYR遺伝子から生成されるタンパク質の働きを変える変異の箇所がいくつか見つかっていて、肌や髪の毛、瞳の色の個人差の要因の1つと考えられています。
アルビノのライオン
肌、髪の毛、瞳の色に関わる遺伝子の位置
すべては紹介できませんでしたが、肌、髪の毛、瞳の色の違いに関わっているとされる遺伝子は、これまでに10個以上報告されていて、染色体上のおおよそ以下のような位置にあるそうです。
これまでに報告されている肌、髪の毛、瞳の色に関わる遺伝子の染色体上の大まかな位置
遺伝子検査で分かる肌、髪の毛、瞳の特徴
国内の遺伝子検査で肌、髪の毛、瞳の特徴の遺伝子を扱っている商品を調べました。ジェネシスヘルスケア社の「ジーンライフ」、DeNAライフサイエンス社の「マイコード ヘルスケア」、ジーンクエスト社の「ジーンクエストALL」などが、肌、髪の毛、瞳の色に関する遺伝子などを検査項目に含めているようです。
ジェネシスヘルスケア - GeneLife(ジーンライフ) - GENESIS 2.0
がん 生活習慣病 その他の病気 アルコール代謝 ダイエット・肥満 薄毛・AGA 肌質 その他の体質 学習能力 運動能力 性格・その他能力 祖先
検査項目詳細
日本でNo.1の解析実績を持つ、遺伝子解析専門の会社。検査項目数は世界最多の360項目。
DeNAライフサイエンス - MYCODE(マイコード) - ヘルスケア
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検査項目詳細
がんや生活習慣病などの疾患、肥満や肌質などの体質の遺伝子検査のトータルパッケージ。管理人一押し!
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検査項目詳細
検査項目は鼻筋の高さを含め約290と多く、体質、疾患、能力、祖先解析まで、広範囲を網羅。
遺伝子、遺伝子検査についてもっと知りたい方へ
このページを作成するにあたり、参考にしている書籍等を紹介します。
- 遺伝子力 - ヒトを支える50の遺伝子 -(システム薬学研究機構(編集) オーム社:2011年2月)
- 遺伝とゲノムどこまでわかるのか(ニュートン別冊 ニュートンプレス:2013年7月)
- 遺伝子医療革命(フランシス・S・コリンズ(著) NHK出版:2011年1月)
その他の遺伝子、遺伝子検査に関する参考資料はこちら。
参考資料一覧
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