親子鑑定は数万円から。DNA鑑定の利用例
公開日:2016年02月24日
DNA鑑定は、犯罪捜査や親子関係の鑑定、災害の犠牲者の身元確認などで利用され、遺伝子検査が最も実用化されている分野の1つです。このページでは、その利用例を紹介します。
性別判定
DNAを使った性別判定は、男性が女性だと偽って競技に参加し、良い成績をおさめようとする不正をチェックするために、規模の大きいスポーツ大会で実施されることが多いです。ただ最近では、DNAによる判定ではなく、テストステロン(男性ホルモンの一種)の血中濃度をもとにした判定が増えているそうです。
DNAによる性別判定方法
Y染色体にはX染色体にない特有の配列があり、それを検出することで性別の判定ができます。それは、アメロゲニンという歯のエナメル質を構成するタンパク質の遺伝子です。この遺伝子はX染色体とY染色体の両方に存在するのですが、PCR法で増幅されるDNAの長さに違いがあり、その長さの違いで性別を判定します。
また、細胞を染色することで、X染色体が2つあるかどうか(女性かどうか)を調べることもできます。女性の場合、X染色体を2つ持っていますが、細胞内では一方のみが働いていて、もう一方は固まった状態(バー小体)になっていて、機能していません。細胞を染色すると、このX染色体の状態を見ることができるので、バー小体が見つかれば、それはX染色体が2つある、すなわち女性であるということになります。
遺体の個人識別
犯罪捜査などで遺体の身元確認を行う際、利用されるのがDNA多型による個人識別です。仮に遺体が見つかっていなくても、被害者の毛髪、血痕、唾液など、わずかでも細胞が得られるサンプルがあれば、それをPCRにかけて増幅させることで、判定が可能になります。もちろん加害者側の調査にもDNA鑑定が使われることは、刑事ドラマなどでおなじみですよね。
親子関係の鑑定
親子関係を調べるには、今ではDNAを使った鑑定がほとんどです。主に父親と子供の親子関係を調べることが多いですが、産院での子供の取り違えなどのケースでは、母親と子供の関係を調べることもあります。
なお、以前は公的な研究機関などで鑑定を行っていましたが、今では民間企業も参入していて、ネットから申し込むことができます。費用は鑑定精度にもよりますが、数万円から10万円程度のようです。ただし、DeNAライフサイエンス社やジェネシスヘルスケア社、ジーンクエスト社など、大手DTC型遺伝子検査会社は、今のところ親子鑑定を検査対象としていないようです。
鑑定の種類
親子鑑定に用いられる、代表的な鑑定方法を紹介します。
STR(Short Tandem Repeat)検査
DNA上には、数塩基~10塩基未満の短い配列が繰り返しつながっている部分がいくつかあります。その繰り返し回数は人によって違いますが、子供は親からその繰り返し配列を受け継いでいます。したがって、この繰り返し回数を調べることで親子鑑定が可能になります。当然、調べる繰り返し配列の個所を増やせば増やすほど、鑑定の精度は高まりますが、その分費用も高くなります。
ミトコンドリアDNA検査
ミトコンドリアのDNAは、父親由来のミトコンドリアが受精後に焼失してしまうため、母親からしか子供に受け継がれません。そのため、ミトコンドリアのDNAが一致していれば、その母親と子供は親子であるということになります。
Y染色体ハプログループ検査
Y染色体ハプログループとは、Y染色体上に同じSNPを持つようなDNA配列のグループのことです。 ミトコンドリアの逆で、Y染色体は父親からしか受け継がれないので、父親と男の子の間では、このY染色体ハプログループが一致するはずです。Y染色体ハプログループを使った検査では、父親が不在であっても、子供からみて父方の祖父、叔父などからサンプルが得られれば、鑑定は可能です。
DNA鑑定の限界
DNA鑑定も完璧なものではありません。DNAは一定の確率で突然変異が生じてしまうからです。また、検査時の人為的ミスや解析データの解釈の違いなどから、間違いが生じることもあり得ます。
技術の進歩によりDNA鑑定の精度は高くなっていますが、ときに間違いが生じることもありうることは、頭の片隅に置いておいてください。
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